2006年 02月 19日
代々木からノルウェーへ続く道
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2月17日の代々木
17日に行われた修斗の代々木大会、是非とも見に行きたかったのだが前々から仕事が入っており、観戦は断念。職場で仕事をしながら「今頃は会場は盛り上がっているんだろうなあ」などと一人でぶつぶつ言っていたところ、上司に不審な目つきで見られた。先程ようやく結果を調べることが出来たのだが、メインイベントである川尻対ハンセンのウェルター級タイトルマッチは何とも不本意な結果に終わった。
開始8秒でハンセンのローキックが川尻へのローブローとなり、ドクターは川尻が試合続行が不可能と判断、ハンセンの反則による川尻の勝利。川尻本人は試合の続行を希望していたようだが、ドクターは中止と判断したようだ。興行的には最悪の結果ではあるが、選手の安全への配慮を優先した主催者側の判断と、それに対し理解を示した会場のファンは実に素晴らしい。選手の安全というものは、常に最優先で考えられるべきものだが、それを実際に理解し実行する彼らは、主催者・ファンの鑑であると言いたい。
PRIDE武士道英雄列伝 アキム・ハンセン編
それでは先日の川尻の記事に続き、今回は残りのハンセンについて。スカンジナビア半島、ノルウェー王国。この国においては、総合格闘技の大会の開催が禁止されている。総合格闘技に携わることに対して逆風が吹くこの国で、ヨアキム・ハンセンは生まれ育った。「忍者みたいにジャンプキックできるようになるのが夢」だったハンセンは10歳からキックボクシングを始めるが、2年後にジムが潰れてしまう。やはりこれも、格闘技というものを野蛮と看做し、理解の無い国柄の影響だ。その後ハンセンは他のスポーツに打ち込み、サッカーではオスロ大会で優勝を成し遂げるが、プロを目指す気などさらさら無かった。そしてハンセンが選んだのは、やはり格闘技だった。
ハンセンはアメリカにあるヘンゾ・グレイシーの柔術アカデミーに通い、そこで知り合ったマーカス・ヤコブリンとオスロで総合格闘技のジムを立ち上げる。ノルウェー国内における総合格闘技の確立を目指してのことだ。そのハンセンはPRIDEについてこう言う。「特にノルウェーの選手にとってPRIDEというリングはとても大きな壁で簡単に上がれるものではない。現在でも僕にとって大きな意味があるけれども、僕が引退して年をとったときに、ノルウェーという国にとって大きな意味が出てくるのかもしれない」大会の開催は禁止、またPRIDEのペイ・パー・ビューすらも禁止。ノルウェー国内での総合格闘技は、日の当たる場所での存在が許されない。そうした状況をハンセンは何とかして変えたいのだろう。彼は現役選手としての立場で考えるだけではなく、格闘技に携わる人間として、格闘技の周囲への認知・普及ということを常に考えているように見える。
ハンセンの家族も一般的なノルウェー人同様、格闘技に対して当初は否定的だった。父シェルは「僕は格闘家じゃなくてスキーヤーになって欲しかったんだ」と言い、自分の息子が選択した道を歓迎していないようだ。また母リーサは格闘技に対する拒否感が強いらしく、番組で次のような話をする。「PRIDEが始まった時、ヨアキムから首を絞めたりすると聞いていたから、一体どんなスポーツなのかと思っていて、そんな危険な事は反対してたんです。本当に初めて見た時はとてもショックを受けました」それでも最近は、家族も格闘技に対して理解を示してくれたようで、番組の中でハンセンは両親に感謝を表していた。しかし一方で、ノルウェー国内の状況は芳しくない。ハンセンは番組の最後でこう話す。「ノルウェーでは総合格闘技が全面的に禁止される方向に向かっている。もしそうなったとしても、僕は国を捨ててでも格闘技を続けるよ」ハンセンという人間を形作る上で、格闘技とは不可欠な存在なのだろう。そして彼は何よりも格闘技を愛しているのだろう、ハンセンが口にした言葉からそう感じ取れた。
安全性は確保されているか
ノルウェー以外にも、世界を見てみれば総合格闘技を禁止、あるいは何らかの規制をかけている国・地域は少なくないが、やはり試合を行う選手に対する安全性や社会的な影響を考慮してのことであろう。総合格闘技の黎明期には、その暴力性や危険性がメディアによってクローズアップされ、否定的な論調による報道も目を引いた。こうした格闘技を危険視する人々に対しては、選手の安全性に対する配慮を十分に行っていることをアピールし、競技としてルールに則って行われ、そのルールを厳格に適用していることを示さねばならない。これは暴力ではなく、れっきとしたスポーツなのであると。そうした点からすれば、代々木で行われた修斗におけるメインイベントでの対応は、非の打ちどころの無いものであった。
だが翻って、他のイベントはどうか。選手の安全性を無視し、興行者側の都合や観客の要望を満たすことを優先してはいないか。PRIDE29にて行われた田村潔司対アリエフ・マックモド戦、ローブローを受けたマックモドの回復を待ち試合は再開されたが、ダメージは回復しておらずタオルが投入された。再開後に明らかに戦意を喪失しているマックモドに対し、レフリーは中止の判断をせず逆にファイトを促すという愚行を行っている。また先の大晦日のDynamite!!では、後頭部へのパンチで失神した武蔵に対し、回復後に試合を続行させるという愚挙を行っている。こうした運営をしている間は「格闘技は危険だ」との意見が無くなることは無いし、反対する人々を納得させることも出来ない。このような事を行っている限り、「選手の安全性に配慮しています」と口先で百万回言ったところで、一体誰が信用するものか。主催者側は例え観客から不満が噴出し、テレビ放送に不都合であろうとも、最も優先するべき事は何であるかを忘れてはならない。安全性は全てに優先する この事が全うされた時、全世界で格闘技が受け入れられる日が来るだろう。代々木で見せた主催者側の対応、そしてそれを受け入れた観客、その先にはハンセンの故郷ノルウェーで、総合格闘技が受け入れられる日が待っていると信じたい。
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17日に行われた修斗の代々木大会、是非とも見に行きたかったのだが前々から仕事が入っており、観戦は断念。職場で仕事をしながら「今頃は会場は盛り上がっているんだろうなあ」などと一人でぶつぶつ言っていたところ、上司に不審な目つきで見られた。先程ようやく結果を調べることが出来たのだが、メインイベントである川尻対ハンセンのウェルター級タイトルマッチは何とも不本意な結果に終わった。
開始8秒でハンセンのローキックが川尻へのローブローとなり、ドクターは川尻が試合続行が不可能と判断、ハンセンの反則による川尻の勝利。川尻本人は試合の続行を希望していたようだが、ドクターは中止と判断したようだ。興行的には最悪の結果ではあるが、選手の安全への配慮を優先した主催者側の判断と、それに対し理解を示した会場のファンは実に素晴らしい。選手の安全というものは、常に最優先で考えられるべきものだが、それを実際に理解し実行する彼らは、主催者・ファンの鑑であると言いたい。
PRIDE武士道英雄列伝 アキム・ハンセン編
それでは先日の川尻の記事に続き、今回は残りのハンセンについて。スカンジナビア半島、ノルウェー王国。この国においては、総合格闘技の大会の開催が禁止されている。総合格闘技に携わることに対して逆風が吹くこの国で、ヨアキム・ハンセンは生まれ育った。「忍者みたいにジャンプキックできるようになるのが夢」だったハンセンは10歳からキックボクシングを始めるが、2年後にジムが潰れてしまう。やはりこれも、格闘技というものを野蛮と看做し、理解の無い国柄の影響だ。その後ハンセンは他のスポーツに打ち込み、サッカーではオスロ大会で優勝を成し遂げるが、プロを目指す気などさらさら無かった。そしてハンセンが選んだのは、やはり格闘技だった。
ハンセンはアメリカにあるヘンゾ・グレイシーの柔術アカデミーに通い、そこで知り合ったマーカス・ヤコブリンとオスロで総合格闘技のジムを立ち上げる。ノルウェー国内における総合格闘技の確立を目指してのことだ。そのハンセンはPRIDEについてこう言う。「特にノルウェーの選手にとってPRIDEというリングはとても大きな壁で簡単に上がれるものではない。現在でも僕にとって大きな意味があるけれども、僕が引退して年をとったときに、ノルウェーという国にとって大きな意味が出てくるのかもしれない」大会の開催は禁止、またPRIDEのペイ・パー・ビューすらも禁止。ノルウェー国内での総合格闘技は、日の当たる場所での存在が許されない。そうした状況をハンセンは何とかして変えたいのだろう。彼は現役選手としての立場で考えるだけではなく、格闘技に携わる人間として、格闘技の周囲への認知・普及ということを常に考えているように見える。
ハンセンの家族も一般的なノルウェー人同様、格闘技に対して当初は否定的だった。父シェルは「僕は格闘家じゃなくてスキーヤーになって欲しかったんだ」と言い、自分の息子が選択した道を歓迎していないようだ。また母リーサは格闘技に対する拒否感が強いらしく、番組で次のような話をする。「PRIDEが始まった時、ヨアキムから首を絞めたりすると聞いていたから、一体どんなスポーツなのかと思っていて、そんな危険な事は反対してたんです。本当に初めて見た時はとてもショックを受けました」それでも最近は、家族も格闘技に対して理解を示してくれたようで、番組の中でハンセンは両親に感謝を表していた。しかし一方で、ノルウェー国内の状況は芳しくない。ハンセンは番組の最後でこう話す。「ノルウェーでは総合格闘技が全面的に禁止される方向に向かっている。もしそうなったとしても、僕は国を捨ててでも格闘技を続けるよ」ハンセンという人間を形作る上で、格闘技とは不可欠な存在なのだろう。そして彼は何よりも格闘技を愛しているのだろう、ハンセンが口にした言葉からそう感じ取れた。
安全性は確保されているか
ノルウェー以外にも、世界を見てみれば総合格闘技を禁止、あるいは何らかの規制をかけている国・地域は少なくないが、やはり試合を行う選手に対する安全性や社会的な影響を考慮してのことであろう。総合格闘技の黎明期には、その暴力性や危険性がメディアによってクローズアップされ、否定的な論調による報道も目を引いた。こうした格闘技を危険視する人々に対しては、選手の安全性に対する配慮を十分に行っていることをアピールし、競技としてルールに則って行われ、そのルールを厳格に適用していることを示さねばならない。これは暴力ではなく、れっきとしたスポーツなのであると。そうした点からすれば、代々木で行われた修斗におけるメインイベントでの対応は、非の打ちどころの無いものであった。
だが翻って、他のイベントはどうか。選手の安全性を無視し、興行者側の都合や観客の要望を満たすことを優先してはいないか。PRIDE29にて行われた田村潔司対アリエフ・マックモド戦、ローブローを受けたマックモドの回復を待ち試合は再開されたが、ダメージは回復しておらずタオルが投入された。再開後に明らかに戦意を喪失しているマックモドに対し、レフリーは中止の判断をせず逆にファイトを促すという愚行を行っている。また先の大晦日のDynamite!!では、後頭部へのパンチで失神した武蔵に対し、回復後に試合を続行させるという愚挙を行っている。こうした運営をしている間は「格闘技は危険だ」との意見が無くなることは無いし、反対する人々を納得させることも出来ない。このような事を行っている限り、「選手の安全性に配慮しています」と口先で百万回言ったところで、一体誰が信用するものか。主催者側は例え観客から不満が噴出し、テレビ放送に不都合であろうとも、最も優先するべき事は何であるかを忘れてはならない。安全性は全てに優先する
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by moonemblem
| 2006-02-19 00:24
| 格闘技