2006年 09月 07日
PRIDE武士道-其の十二- 感想(下)
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第六試合
桜井“マッハ”速人 ○-× ルシアノ・アゼベド
1R 6分35秒 TKO
夏に弱いとインタビューで話していた桜井、入場時の表情をみると精彩が無い。その様子を見ただけで心配になってしまった。試合が始まるとアゼベドがしつこく組み付いてテイクダウンを狙い、桜井はかなり戦いにくそうだ。桜井は動きにキレが感じられず、スタミナ面も今回は不安なため、長期戦になるとこのまま押し込まれるのではないか、と見ていて思った。膝でのカットによりストップがかからなければ、桜井は苦労したかもしれない。カットを起こした桜井の膝、アゼベドの顔面にきれいに入っているが、これは桜井が狙って行ったものだ。両腕を上げてタックルを誘い、そこにカウンターで叩き込んでいる。執拗にテイクダウンを取ろうとするアゼベドに対し、仕掛けが見事に当たった形。調子が良くないため鮮やかなKO勝利とは行かなかったが、最低限の結果を出したのは流石は桜井と言ったところか。聞く所によると、桜井は夏の試合はこれで最後らしい。次は夏以外の季節で、生き生きとした姿を見せて欲しい。
第七試合
美濃輪 育久 ○-× バタービーン
1R 4分25秒 腕ひしぎ十字固め
この試合、美濃輪が開始直後に出したドロップキック二連発に尽きるのでは無いだろうか。会場も一気に盛り上がっていたし、明らかにそれまでの試合と会場の空気が違う。最後も腕十字での一本勝ちで締め、美濃輪は自分の成すべき事をきっちりと行った。バタービーンはグラウンドで上を取ってから何も出来なかったが、そのキャラクター以外には何も期待していなかったので、別にこれでいい。解説の高阪が試合を見て「技術云々の話じゃないですよね、これ」と言っていたが、まさしくその通り。細かい技術や勝負論、そんなもの、この試合では誰も求めていない。美濃輪は今後もこうした試合を組まれると思うが、ファンもそれを支持しているし、美濃輪も生きると思う。
第八試合
デニス・カーン ○-× アマール・スロエフ
1R 4分9秒 裸絞め
自分はカーンが勝つとは思っていたが、ここまで圧倒するとは予想外の結果。カウンターのストレートでダウンを奪った時点で、この試合の勝負は決まった。しかし、このカーンの伸びの有るストレートは何度見ても強烈だ。受けたスロエフは腰から崩れるのでは無く、インパクトの衝撃で後方に転倒するような形になっており、まさに「殴り倒す」といった表現が当てはまる。ただの一撃で試合の展開を変え、流れを引き寄せてしまうこのストレートは、対戦相手にとって脅威の一言。スロエフはタックルを切るのは巧いが、一度グラウンドに持ち込まれると何も出来ないのは分かっていた事なので、こうなってしまっては完全に不利。そして勝機を逃さずにカーンはタップを奪ったが、ここぞという場面できっちりとフィニッシュまで持って行く決定力は見事と言う他無い。優勝候補と呼ばれるに相応しい試合であった。
第九試合
パウロ・フィリオ ○-× 長南 亮
1R 2分30秒 腕ひしぎ十字固め
もう一人の優勝候補が続けて登場。こちらの試合はカーンが与えたようなインパクトこそ無かったが、全く危なげの無い試合運びで完勝した。流石はフィリオ、安定感は抜群。長南は開始早々にテイクダウンされ、全く何も出来なかったが、グラウンドでは勝ち目が無いのは分かりきっていた事なので、ファーストコンタクトを生かせなくては厳しい。自分としては、長南がこれほど簡単に一本を奪われるとは思っていなかった。長南はこれまでプロのリングではサブミッションでの一本負けが無く、今回が初めてであるのだが、これに関しては実力の差を見せ付けられた印象が強い。長南はアンデウソンに勝利してのち、その実力を過大に評価されてきた傾向が有るが、今回の試合で完全にPRIDEウェルター級戦線からの脱落は避けられないであろう。今後は階級を落として出直すらしいので、今回の敗戦を取り戻す程の奮起をして貰いたい。
第十試合
郷野 聡寛 ○-× ゲガール・ムサシ
2R 4分17秒 腕ひしぎ十字固め
郷野を打ち崩すには、ムサシでは経験不足だった。スタンドでの圧力は強いが、攻めがいささか単純だ。時折ハイや組んでの膝を出す以外は、顔面を狙ったパンチに攻撃が偏ってしまっている。仕掛けたラッシュは郷野の固いガードで凌がれてしまっていたが、これもフックを連続で顔に集めるだけで、打ち分けも無くリズムも単調。単なる力任せの攻撃は、郷野には通用しない事はこれまでの試合で明らかなはずだ。これでは経験と技術を備える郷野を崩すことは出来ないし、揺さ振りを掛けるなどの何らかの工夫を行うべきではなかったか。これらは恐らく、ムサシの生真面目な性格ゆえもあろう。だがもう少しクレバーな戦い方を身に付けることが出来れば、更なる強さを得る事が出来るはずだ。まだまだ選手としては荒削りで完成されていないが、逆に言うと伸びしろが多いという事でもある。今後ムサシが成長し、また我々の前に姿を現すことを期待する。
第十一試合
三崎 和雄 ○-× ダン・ヘンダーソン
判定 3-0
リベンジを許す事になるとは予想外。だがヘンダーソンが今回のGPで優勝できる可能性は、極めて少ないと自分は予想していたので、その点では意外では無い。ヘンダーソンはスタミナ面での劣化のため、決勝ラウンドを勝ち抜く事は至難であり、単に敗北が訪れるのが早まっただけとも言える。さて三崎は今回も慎重な試合運びでペースを握り、ヘンダーソンにスタミナ切れも起こさせて勝利した訳だが、言うならば「ヘンダーソンに勝った」のでは無く「ヘンダーソンに勝たせなかった」と表現するのが適切かもしれない。三崎はバローニ戦でも見せたように、自分の距離を保ちながらペースを作るのが巧いが、逆に踏み込みが足らずKOを狙える攻撃をあまり行わないとも言える。確かに三崎は手数は出していたが、自分としてはよりアグレッシブに攻めていく姿勢が見てみたい。もっとも、ヘンダーソンを相手に、効果的な一撃を受けなかった事は、それだけで十分素晴らしい事ではあるのだが。
第十二試合
五味 隆典 ○-× デビッド・バロン
1R 7分10秒 裸絞め
バロンを圧倒し、五味が勝ったのは良かった。だが、以前の調子が良かった時に見せた強さには程遠い。今回の五味の試合を見て、物足りなく思った人は多いはずだ。この試合の五味については、書くと長くなりそうなので、日を改めて明日にでも書くことにします。もういい加減に眠らないと…。
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桜井“マッハ”速人 ○-× ルシアノ・アゼベド
1R 6分35秒 TKO
夏に弱いとインタビューで話していた桜井、入場時の表情をみると精彩が無い。その様子を見ただけで心配になってしまった。試合が始まるとアゼベドがしつこく組み付いてテイクダウンを狙い、桜井はかなり戦いにくそうだ。桜井は動きにキレが感じられず、スタミナ面も今回は不安なため、長期戦になるとこのまま押し込まれるのではないか、と見ていて思った。膝でのカットによりストップがかからなければ、桜井は苦労したかもしれない。カットを起こした桜井の膝、アゼベドの顔面にきれいに入っているが、これは桜井が狙って行ったものだ。両腕を上げてタックルを誘い、そこにカウンターで叩き込んでいる。執拗にテイクダウンを取ろうとするアゼベドに対し、仕掛けが見事に当たった形。調子が良くないため鮮やかなKO勝利とは行かなかったが、最低限の結果を出したのは流石は桜井と言ったところか。聞く所によると、桜井は夏の試合はこれで最後らしい。次は夏以外の季節で、生き生きとした姿を見せて欲しい。
第七試合
美濃輪 育久 ○-× バタービーン
1R 4分25秒 腕ひしぎ十字固め
この試合、美濃輪が開始直後に出したドロップキック二連発に尽きるのでは無いだろうか。会場も一気に盛り上がっていたし、明らかにそれまでの試合と会場の空気が違う。最後も腕十字での一本勝ちで締め、美濃輪は自分の成すべき事をきっちりと行った。バタービーンはグラウンドで上を取ってから何も出来なかったが、そのキャラクター以外には何も期待していなかったので、別にこれでいい。解説の高阪が試合を見て「技術云々の話じゃないですよね、これ」と言っていたが、まさしくその通り。細かい技術や勝負論、そんなもの、この試合では誰も求めていない。美濃輪は今後もこうした試合を組まれると思うが、ファンもそれを支持しているし、美濃輪も生きると思う。
第八試合
デニス・カーン ○-× アマール・スロエフ
1R 4分9秒 裸絞め
自分はカーンが勝つとは思っていたが、ここまで圧倒するとは予想外の結果。カウンターのストレートでダウンを奪った時点で、この試合の勝負は決まった。しかし、このカーンの伸びの有るストレートは何度見ても強烈だ。受けたスロエフは腰から崩れるのでは無く、インパクトの衝撃で後方に転倒するような形になっており、まさに「殴り倒す」といった表現が当てはまる。ただの一撃で試合の展開を変え、流れを引き寄せてしまうこのストレートは、対戦相手にとって脅威の一言。スロエフはタックルを切るのは巧いが、一度グラウンドに持ち込まれると何も出来ないのは分かっていた事なので、こうなってしまっては完全に不利。そして勝機を逃さずにカーンはタップを奪ったが、ここぞという場面できっちりとフィニッシュまで持って行く決定力は見事と言う他無い。優勝候補と呼ばれるに相応しい試合であった。
第九試合
パウロ・フィリオ ○-× 長南 亮
1R 2分30秒 腕ひしぎ十字固め
もう一人の優勝候補が続けて登場。こちらの試合はカーンが与えたようなインパクトこそ無かったが、全く危なげの無い試合運びで完勝した。流石はフィリオ、安定感は抜群。長南は開始早々にテイクダウンされ、全く何も出来なかったが、グラウンドでは勝ち目が無いのは分かりきっていた事なので、ファーストコンタクトを生かせなくては厳しい。自分としては、長南がこれほど簡単に一本を奪われるとは思っていなかった。長南はこれまでプロのリングではサブミッションでの一本負けが無く、今回が初めてであるのだが、これに関しては実力の差を見せ付けられた印象が強い。長南はアンデウソンに勝利してのち、その実力を過大に評価されてきた傾向が有るが、今回の試合で完全にPRIDEウェルター級戦線からの脱落は避けられないであろう。今後は階級を落として出直すらしいので、今回の敗戦を取り戻す程の奮起をして貰いたい。
第十試合
郷野 聡寛 ○-× ゲガール・ムサシ
2R 4分17秒 腕ひしぎ十字固め
郷野を打ち崩すには、ムサシでは経験不足だった。スタンドでの圧力は強いが、攻めがいささか単純だ。時折ハイや組んでの膝を出す以外は、顔面を狙ったパンチに攻撃が偏ってしまっている。仕掛けたラッシュは郷野の固いガードで凌がれてしまっていたが、これもフックを連続で顔に集めるだけで、打ち分けも無くリズムも単調。単なる力任せの攻撃は、郷野には通用しない事はこれまでの試合で明らかなはずだ。これでは経験と技術を備える郷野を崩すことは出来ないし、揺さ振りを掛けるなどの何らかの工夫を行うべきではなかったか。これらは恐らく、ムサシの生真面目な性格ゆえもあろう。だがもう少しクレバーな戦い方を身に付けることが出来れば、更なる強さを得る事が出来るはずだ。まだまだ選手としては荒削りで完成されていないが、逆に言うと伸びしろが多いという事でもある。今後ムサシが成長し、また我々の前に姿を現すことを期待する。
第十一試合
三崎 和雄 ○-× ダン・ヘンダーソン
判定 3-0
リベンジを許す事になるとは予想外。だがヘンダーソンが今回のGPで優勝できる可能性は、極めて少ないと自分は予想していたので、その点では意外では無い。ヘンダーソンはスタミナ面での劣化のため、決勝ラウンドを勝ち抜く事は至難であり、単に敗北が訪れるのが早まっただけとも言える。さて三崎は今回も慎重な試合運びでペースを握り、ヘンダーソンにスタミナ切れも起こさせて勝利した訳だが、言うならば「ヘンダーソンに勝った」のでは無く「ヘンダーソンに勝たせなかった」と表現するのが適切かもしれない。三崎はバローニ戦でも見せたように、自分の距離を保ちながらペースを作るのが巧いが、逆に踏み込みが足らずKOを狙える攻撃をあまり行わないとも言える。確かに三崎は手数は出していたが、自分としてはよりアグレッシブに攻めていく姿勢が見てみたい。もっとも、ヘンダーソンを相手に、効果的な一撃を受けなかった事は、それだけで十分素晴らしい事ではあるのだが。
第十二試合
五味 隆典 ○-× デビッド・バロン
1R 7分10秒 裸絞め
バロンを圧倒し、五味が勝ったのは良かった。だが、以前の調子が良かった時に見せた強さには程遠い。今回の五味の試合を見て、物足りなく思った人は多いはずだ。この試合の五味については、書くと長くなりそうなので、日を改めて明日にでも書くことにします。もういい加減に眠らないと…。
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| 2006-09-07 03:13
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